維持管理を怠ると社会的責任と罰則が科せられます
「うちは大丈夫」と思っていませんか?
少しの油断で大惨事を招く前に
建築基準法にて定められている「特殊建築物等定期調査」と「建築設備定期検査」は、建築物所有者(もしくは管理者)の義務です。これらの維持管理を怠るとどうなるのか……あなたは十二分に認識されていますか?
調査・検査の重要性
もし、維持管理を怠っていた建築物・設備で思わぬ事故が起きたら、その責任は建築物の所有者に課せられます。
「外壁の一部が落下して、下を歩いていた通行人がけがをした」
「火災が発生し、排煙装置が作動せず利用者が一酸化炭素中毒で死亡した」
「災害による停電時に非常用照明が作動せず、利用者が避難時にけがをした」
このような事故は他人事ではありません。「うちは大丈夫だろう」という慢心による維持管理不足が思わぬ被害を招くことがあります。
2001年の新宿・歌舞伎町ビル火災
有名な事故として挙げられる2001年の歌舞伎町の雑居ビル火災。44名の死者を出し、日本の火災事故として戦後5番目に大きな事故となりました。出火原因は放火とみられていますが、被害を拡大させた要因はビルの維持管理不足にありました。
- 熱や煙を感知する自動火災報知設備が作動していなかった
- 煙感知器連動防火戸が閉まらなかった
- 避難通路が荷物などでふさがれており、移動が困難であった
一部は消防指導が入っていたにもかかわらず改善されることがなかったとされており、ビルオーナー・テナント関係者など6名が消防法違反、業務上過失致死の疑いで逮捕されました。この事件を受けて、2002年には建築物所有者などへの責任をより重くする目的で消防法が改正されました。
罰則はあるの?
毎年、対象となる建築物および設備の所有者には、特定行政庁から調査・検査の通知が送付されます。もし定められた調査・検査と報告を怠った場合、あるいは虚偽の報告をした場合は、建築基準法第100条および101条に則り、100万円以下の罰金が科せられます。
さらに、報告義務を怠って不測の事故や災害が起きた場合には、刑法ならびに民法によって罰せられます。裁判で悪質だと判断された場合には、執行猶予がつかずに実刑判決が下される事例も増加しています。